http://2ch.sc/より
http://nozomi.2ch.sc/test/read.cgi/x3/1262263440/
WS000014
個人的に大変な力作であるSSだと思うので掲載しましたが

※このSSは長い上に未完です。
※ガンダムXの物語を知らないと分からない部分も多いと思います


興味のある方だけどうぞ。

関連記事まとめ

もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら☆
http://blog.livedoor.jp/redcomet2ch/archives/37747904.html
もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 2 (未完SS)☆
http://blog.livedoor.jp/redcomet2ch/archives/37762393.html
もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 3(未完SS)☆
http://blog.livedoor.jp/redcomet2ch/archives/37762491.html
もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 4 (未完SS)☆
http://blog.livedoor.jp/redcomet2ch/archives/37762537.html
もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 5 (未完SS)☆
http://blog.livedoor.jp/redcomet2ch/archives/37762581.html


346:通常の名無しさんの3倍:2010/09/06(月) 23:45:31 ID:???.net

""""セインズアイランド"
大小6つの島からなるこの群島は、航海上の拠点として
シーバルチャーやオルク達に支配される事なく独自の発展を遂げた。
コロニー落としの被害を免れたエネルギープラントは、海に生きる者達にとっての生命線となり
交易で栄えるこの島は、戦後有数の海上商業都市となっていた。

治安が回復し、法整備が行き届いたこの島には入国審査があり
入国管理局のマイルズ=グッドマンによる監査を受けたフリーデンはこの島に寄港した。
彼らが大地を踏むのは、実に一ヶ月ぶりのこととなる。

買い物を終えたトニヤは、紙幣が本当に使える事に驚いたと感想を洩らしながら
アムロに荷物を押し付けた。二人はフリーデンの買い出しに出ている。
「すっかり荷物持ちだな」「いいじゃない、デートだと思えば」
「そういう男に見られていたのか、俺は」「あはは、私、結構アムロの事好きよ?声とか」
アムロは車のトランクに荷物を詰め込みながら、トニヤに訊ねた。
「サラの代理だろ、俺は」「ん、分かる?」「気付いてないのはウィッツぐらいじゃないのか」
ジャミルに好意を持つサラは、フリーデンに残っている。
ガロード、ティファ、キッドやウィッツ、ロアビィはアムロ達と同じく買い出しだ。
「進展、あると思う?」「ジャミルとロアビィが階段から転げ落ちれば、かな」
「何ソレ?」トニヤにアムロは笑った。「大昔の映画に、それで人格が入れ替わるのがあるのさ」
助手席のドアをトニヤの為に開くアムロ。トニヤは頬を掻きながら、提案した。
「これから個人的なショッピングの時間が欲しいな~なんて」
「ん……デートなんだろ?」アムロはドアを閉めた。


10も年下の女性に、海風が靡く風光明媚な町を連れ回されるのも
悪くないなんて思う、29歳のおっさんであった。

……となると思っていたのに
「どうしてこうなった」
アムロは呟いた。絡められた腕が脇に当たる。
「ど~ぉ? いい飛びしてるでしょう?」
「ア、アア、ソウデスネ……」
銀色の長髪を靡かせ、真っ赤なルージュを引いた口で
セインズアイランドを生業にするシーバルチャー・ルマーク=カウトが
自作のMA・エスペランサをアムロにアピールしてくる。ついでに本人も。
(こんな事になるなら、服の一つや二つ、買ってあげれば良かった……)
買い物に悩んだトニヤが道をうろうろと回るのに付き合っていたら
自分が昔乗っていたRX78によく似たMSが立っているのを見て
思わず足を運んできてしまった結果である。
MSの入国規制を行っているセインズアイランドで、生のMSが立っている筈がなく
これはただのモニュメントであり、物好きが作った「オダイバーガンダム」であった。
そこでその物好き、ルマークの一目惚……営業にあったのだった。
そんな訳で、船に乗せられ、もはや逃げる場所もなく、セインズアイランドの沖合いで"彼"の作ったMAを見ている。
MA・エスペランサ自体はアムロの目から見ても中々いいMAだ。
アムロを見て一目でMS乗りと見抜いたルマークは、それなりのキャリアと実力を持つシーバルチャーなのだろう。
だが、自分が居ないことに気付いたトニヤによるヘルプをアムロは期待していた。それも可及的かつ速やかに、である。

その頃、トニヤはエニル=エルとランチをしていた。


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347:通常の名無しさんの3倍:2010/09/06(月) 23:48:52 ID:???.net

夜の街にパ~っとやっていたウィッツは、橋の下でリバースしていた。
相棒のロアビィから見ても、明かにオーバーペースで酒を飲んでいたので
ウィッツの姿は当然かつ妥当な結果であった。
そんなにウィッツが酒を煽ったのはトニヤが原因だろう。
新しいドレスを着てどこかへと出かけてしまったのだ。
男ができた、とMS乗り二人は勘違いした訳で、トニヤの事を憎からず想っているウィッツは荒れたのだった。
「俺ってば面倒見いいんだから」と、失恋野郎の為に飲み物を買っていた時である、
はだけた胸元にキスマークを付けたアムロが逃げるように走っているのを見かけたのは。
「おやおや、ご盛んなようで。夜もエースってね。……ちょっとオヤジ臭かったかな」
つーかハメ外しすぎでしょ、とロアビィは思った。
アムロはタキシードにシルクハット、マスクまでしていたからだ。



ウィッツは誤解している。
トニヤが向かった先は「ライラック」
エニル=エルの店であり、会うのは彼女本人だ。
トニヤが来ているドレスも、エニルによって譲られたもの。
気のあった二人は、ディナーも一緒にしていたのだ。
「『結婚』!? って、あなた結婚申し込まれてんの!?」
「あたし、ついこの間までモビルスーツ乗りやってたのよ…」
「女の過去は、言わなきゃ無いのと一緒よ!」
自身の過去と幸せについて悩むエニルに、トニヤは語る。
「今の時代って幸せ掴むのも、不幸せになるのも、全部自分自身のせいだと思うのよ」
 アタシは自分の思うように生きる。自分で選んだ道を歩くの!
 原因は全部自分だから、失敗しても誰にも文句言えないけど……でも成功したら、幸せ独り占め!」
トニヤは明るく、しなやかで強かった。
その太陽のような輝きに、エニルは揺り動かされた。
自分の船に来ない?と誘うトニヤに、エニルは心が躍ったのだ。
それはアムロには出来ないことだった。
「すまん、匿ってくれ!」
ガラガラと、ベルを鳴らして男が店に入り込んできた。
「あっ、ごめんなさい! 今日は貸切…っ!?」
エニルはギョッとした。何事かと振り返ったトニヤも絶句した。
半裸のタキシードを着た仮面の男が突っ立っていたからだ。
エニルは思わず警察の電話番号が頭に過ぎったし、トニヤは銃を入国の際に預けさせられたことを悔やんだ。
「……って、アムロ!?」
「トニヤ?どうしてここに!」
それはトニヤが聞きたい。というより、どうしてそんな格好をしているのか。
答えはトニヤがすっかりアムロの事を忘れていたからである。
そしてアムロがモテ男だからである。生物学的に男の女達が経営する夜の街で。
「ゴメンゴメン、てっきりフリーデンに帰ったかと……」
「フ、フリーデンに帰ったらぐっすり眠れるって保証はあるのか……
 生身でスカート付きに襲われる怖さを、知っているのか!!」
「は、はいぃ?」
「もう怖いの、いやなんだよ……」
と、アムロは彼らに着せられたタキシードを脱ぎ捨て、変装の為に顔にテーブルクロスを裂いて撒いた。
礼服仮面から月影の騎士へのジョブチェンジである。
「あ、これはテーブルクロスの代きn……エニル=エル!!?」
「また…プッ……逢えたわね……プッ……」
エニルはアムロを突き飛ばすと、店の外へ駆け出していった。
入れ違いに入ってきた彼女の恋人・マイルズがアムロの姿を見て
変質者がエニルを襲ったのだと勘違いし、アムロはその日の夜を留置所のコンクリートの床で過ごした。


348:通常の名無しさんの3倍:2010/09/06(月) 23:52:14 ID:???.net

車の中で一通り笑ったエニルは、その後虚脱したようにハンドルにもたれ掛かっていた。

ガロード=ランがいる。

その事が、灰を被って燻っていた火種にドロドロとした熱を加えた。
だが一方で、トニヤの作った爽やかな風が灰も火種も全て吹き飛ばしてくれる……
そんな期待をしていた。憎しみと友情が縄のように絡みあい解けることはない。
気がつけばフリーデンが寄港している港まで来ていた。
夜が、明け始めていた。




「あの人は、来ません」
翌日、出港を前に波止場に立ち続けているトニヤに、ティファは告げた。
ティファのNT能力は絶対だ。
「間違いないの?」
寂しそうにトニヤは聞き返した。
エニルを知っているようだったアムロは、留置所から帰ってきて以降
自室でトランクスとランニングだけで布団を被って不貞寝をしている。
というかガクブルザクグフドムゲルググしていた。
「アムロ!アムロ!」「ゲンキ?ゲンキ?」心配するハロ1号と2号を蹴っ飛ばす。
「ヤツが来る…フラッシュバックにヤツの影っ!」アムロは悲鳴を上げた。
フリーデンの医師・テクスはウィッツには二日酔いの、アムロには睡眠薬を用意した。
フリーデンが出港する。
「あとヒトフタマルで、外洋に出ます」
「高熱源体、接近!」
海上を滑るように回り込み、フリーデンと距離を縮めてくるMA
それはエスペランサだ。
「なんでアムロとウィッツがいないの!」
「グロッキーなの。男には色々あるのさ、少年!」
ガロードとロアビィが出撃するが……「速い!」
エスペランサはフリーデンの回避も、ガンダムの攻撃も許さず、懐にまで入り込んだ。
だが……
「………」
モノアイを光らせ、艦橋を睨んだエスペランサは、その蒼い機体を翻してどこかへ消え去ってしまった。
「……あの人です」
ティファが静かに言った。
エスペランサに乗っていたのはエニル=エルだった。
彼女は再び戦いの世界に舞い戻ったのだ。



その頃、アムロは、ベットから転げ落ちて床に頭をぶつけていた。



第二十話「これじゃ道化だよ……」


350:通常の名無しさんの3倍:2010/09/07(火) 13:23:54 ID:???.net

アムロがダメダメ過ぎて吹いたw
たまにはこういうのもいいねw


421:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 03:09:38 ID:???.net

戦後15年……
ようやく環境の安定した地球では、人々はかつての暮らしを徐々に取り戻している。
大規模シェルターによって数万単位で生き延びた人々は、幾つもの小さな独立国家を形作っていた。
世界人口9800万人……これは、戦前の百分の一にも満たない
だが、それでも尚、かつての栄光と権力を取り戻そうとする者達がいた。
政府再建委員会――戦後の地球を統一し、新連邦政府を作るため発足された組織である。
そのメンバーの多くは、旧連邦の政府関係者、軍上層部、産業界のリーダー達であった……


フリーデンはサテライトシステムのレーザー回線が使用されたと思われる海域を調査していた。
だが、戦前の海図しか持たない彼らにとって、それは至難の作業であった。
ティファのNT能力も、その存在を探知することはなかった。
キッドの話ではサテライトシステムの認証にNTが必要なのであって、認証さえ済ませればマイクロウェーブの使用にNTは要らない。
とすれば目的地にはNTは存在しないのかも知れない。
だが、仮にNTが存在しないとしても、サテライトキャノンのような兵器が存在するという脅威に代わりはない。
どのみち、避けて通る場所ではないだろう。
MSによる探索から戻ったアムロはコクピットのハロ二号機を叩いた。
遊戯室のマスターをやっているハロと違って、この二号機は戦闘のサポートとしてアムロのドートレスのコクピットを根城にしている。
「なんだとぉ!? ティファに、『ちっとも変わってねぇ』って言われたってか!」
格納庫にウィッツの声が響く。どうもガロード関連の話のようだ。
「『男として成長してねぇ』って言われてんのと一緒だろ! なぁ?」
「まっ、そうなるかな~? 俺だったら落ち込んじゃうよ~?」
二人の言葉に肩を下げるガロード。
「そうなのか……アムロもやっぱそう思う?」
と、最後の望みを最年長の男にかける少年に、アムロは少し考えて答えた。
「進化と進歩は少し違う、かな」テクスみたいな物言いだと、アムロは少し思いながら続けた。
「前者は望む望まずに関わらず起こってしまう事があるけど、後者は自分が望まないと手に入らない」
「それって、つまりティファは俺の事……だぁぁぁあ~~」
頭を掻きむしりながらガロードは地団駄を踏んだ。
「ぼ~っと突っ立っているとティファに置いていかれるぞ、ガロード」
「う……アムロはやっぱスゲーなぁ」ガロードは天を見上げ嘆いた。
「やっぱり俺、成長してないのかぁ~~!?」

ただの少年だったアムロ=レイは、戦いの世界に引きずり込まれ、生きるために進化せざるを得なかった。
大なり小なり、ニュータイプと呼ばれた人間はそういうものだろう。
ジオン=ズム=ダイクンの定義によれば、宇宙環境に適応した人類、それがニュータイプであるからだ。
結果として認識力の拡大、時にエスパーのように他人と繋がることのできる能力を手に入れた者が現れた。
が、その力と、それを持つ人間の精神は必ずしも比例しない。
人の肉体が進化したところで、人間の精神が進歩しなければ、それは悲劇にしかならない。
なまじ、お互いの事を知ることができる分、その傷は遙かに大きい。
アムロとララアも、カミーユとハマーンも、邂逅の先には決裂が待っていたのだ。
後の世に「ニュータイプという者は個人的には不幸だった」と言われる由縁の一つにはそういう理由もある。
一個の人間として強く、優しく進歩しなければ、ニュータイプという進化は袋小路に陥るのだ。
その意味で、ニュータイプを「争わないで済む人間」と定義した連邦のレビル将軍は本質を突いていたのかも知れない。
アムロが知る由もないことだが。
だからアムロは経験としてニュータイプを過大評価していない。
あるいは、ジュドー=アーシタに続いて、シーブック=アノーやアフランシ=シャアのような人間がもっと早く現れていれば
今少しだけ、ニュータイプという存在に期待をかけていたのかも知れないが。
シャアともジャミルとも違う「ニュータイプ」をアムロは価値観として持っている。


422:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 03:13:37 ID:???.net

ここにもう一人、「ニュータイプ」に想いを抱く者がいる。
アイムザット=カートラル――政府再建委員会の諜報総括官である。
委員会はアフリカ地域を統合し、小国が乱立するアジア地域に軍を伸ばしていた。
バルチャーが跋扈する北米大陸は無法地帯として、委員会側は重く見てはいない。
アイムザットはその北米大陸の調査を管轄していると共に、あるプロジェクトの責任者でもあった。
それは、ジャミル達の目指す人工島・ゾンダーエプタで建造されている新型ガンダムの事だ。
しかしアイムザット程のガンダム、そしてニュータイプへの執着は、委員会の高官は持っていないようだった。
「確かに、ニュータイプやガンダムは有効な戦力だ。だが、ガンダム1機だけでは世界は動かせん。
 我々が欲しているのは、あくまで利用価値のあるニュータイプと、象徴としての強大な力を持った新しいガンダムなのだ」
太平洋を移動するフリーデン――かつての英雄・ジャミル=ニートが率いる、ガンダム3機を要し、ティファ=アディールというNTの少女を保護している艦
戦局を換える切り札であるそれを、高官達はただの敵、駒としてしか認識していないことに、アイムザットは愕然とした。
「どちらにしても、君はGビット回収に失敗している。その事を忘れて貰っては困るな」
「援軍は回そう。あの島は我々軍部にとっても大切な施設だ。だが、私が指摘しているのは、君の指揮管理能力なのだよ……」
アイムザットは委員会から指揮権を奪われ、軍の特殊工作部隊が派遣される。
新型MSバリエント共にフリーデン捕獲作戦の指揮を執る男、その名はカトック=アルザミール。
戦前から軍に身を置く、歴戦の男である。
彼はその経歴に相応しく、(その人を食ったような態度からは想像できないが)作戦の準備を手際よく行う。
漁師に化けてフリーデンに潜入し、制圧するという奇策である。カトックの巧緻なところは魚醤を浴びさせることで設定に説得力を与えたことであった。
一方でフロスト兄弟は、その様子を眺めながらこの作戦の後を考えていた。
「今回の作戦が成功したら、アイムザットを切る。その反対なら、まだあの男の部下を演じ続ける……」



しかしカトックの「経験」はティファの「能力」によって破られる。
バルチャーに襲撃された漁師を装ってフリーデンに乗船したカトック達は、ジャミルらに銃口を向けられていた。
「軍人か?」ジャミルは問う。
そこへティファが敵意を察知し、それを報せに駆け込んできた。
その敵の正体が自分達を援護する委員会のMS部隊だということをカトックは知っている。
つまり、ティファの能力は精確であり、本物なのだ。
(そうか、俺達もこうして見破られたってわけかい……)
カトックは年端もいかない少女を睨んだ。


ティファが予知するまでもなく、アムロはドートレスのコクピットで敵襲に備えていた。
非武装の船をシージャックするだけでも難しいのに、バルチャー艦であるフリーデンを内側からだけで制圧するのは不可能だからだ。
必ず外から揺さぶりがある……ティファの「能力」でカトックらの行動を知った時、アムロやジャミルは「経験」からそれを予想した。
そうと分かっていながらカトック達にジャミル自ら対峙したのは、フリーデンの人手不足もあるが、
敵が軍隊であることをジャミルが疑っているからだろう……アムロは結論づけた。
フリーデンが揺れる。敵はフロスト兄弟のガンダム……そして謎の新型MSだ。
同時にサラから連絡が入る。――カトック達に逃げられ、ジャミル達は艦内で銃撃戦に入ったと。
オルバが駆るアシュタロンが一気にフリーデンに接近する。
アムロは出撃と同時に対艦用ミサイルを改造したグレネードをアシュタロンに向かって投げた。
「ふ…子供じゃあるまいし」グレネードを半身で避けたアシュタロンに
「オルバ!」シャギアが吼えた。
ドートレスのライフルがグレネードを撃ち抜き、空中でアシュタロンを巻き込んで爆発を起こした。
「く…やってくれる!」「あのドートレスのパイロット、手練れだな。オルバよ、私の援護を頼む」
ダメージを受けたアシュタロンに白兵戦は厳しいだろうと、シャギアは断じた。
後続のバリエントが追いついてくる。フリーデンのガンダムも発進したようだ。
「バリエントか……新型の性能、見定めさせてもらおう」


423:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 03:18:18 ID:???.net

委員会はドートレス系とは別に連邦の主力となりえるMSの開発を考え、幾つかの試作機を造っていた。
機動性に特化したNRX-007や防御に特化したNRX-010、火力に特化したNRX-011のように
このNRX-009を与えられた機体は簡易トランスシステムによる降下戦を想定した機体であり(制空権に特化したMSはMRMA-006が存在する)
いわばGW-9800ガンダムエアマスターの血統に属すると言えるだろう。この血筋はNRX-0015ガンダムアシュタロンに帰結する。
本来試作機であったバリエントであるが、その優秀性から量産が決定し、今は試作機ナンバーを外され、NR-001を与えられている。
「モビルスーツの性能も戦い方も、今までの連中と全然違う!」
ガロードが叫ぶ。
バリエントのビームライフルを立て続けに防いでいたディバイダーが耐えきれず、煙を上げた。
数が多く、機動力もあるので回避一辺倒で切り抜けるのは難しい。
防御を織り交ぜながら引き付けてハモニカ砲で一掃するだけでもガロードはよくやっていると言えるだろう。
「ガロード、相手はおそらく軍隊だ。フォーメーションがある! 一体一体に気を取られ過ぎるな!」
忠告は出すが、むしろ一対多の戦いの方がガロードはセンスがある、とアムロは見ている。
パイロット同士、シミュレーターで訓練をしたときも(MS乗り達はゲーム感覚だったが)普段よりも弱く感じた。
群れないで一人で生きてきた事や、本人の高い順応性からくる把握力、それに常に数の上で劣勢だったフリーデンでの戦い
それらがガロードを乱戦向きのパイロットへと進化させたとアムロは見ている。
が、あくまで一対多としては優れているが、味方である自分たちと歩調を合わせる、寡兵対大軍の戦いは上手いとは言い難い。
これはこの世界のMS乗り達全体の傾向ではあるのだが(ロアビィはその性格と機体上、他の二人よりは上手い)
アムロは軍人として半生を過ごしてきた男なので、その点で至らない仲間達のフォローに回る部分が多い。機体がドートレスということもある。
それは本来のアムロの適正ではない。
アムロこそはまさに単騎で敵を圧倒する能力があり、背中に援護を受けるべき存在なのだ。
今のアムロはフットボールで例えるならば、前線でボールを持つべきストライカーが、後方でボランチとして献身的に動き、ボールを捌いているようなものであった。
ただし、今のアムロはそれが悪くない。
「シャアの暴走を止める」という強力なモチベーションが無い今のアムロは、ゴールへの欲求が低いストライカーであるからだ。
「ウィッツ!」接近戦の武器がないエアマスターにヴァサーゴが密着するように戦っている。
「アムロ!ヘルプ!イソゲ!」アムロはウィッツが距離を取れるよう、ビームライフルのトリガーを引いた。
「軍だか何だか知らないけど、なめんじゃねぇぞぉっ!!」
一方、ガロードが十字砲火を避けながら、バリエントのお株を奪い上空からビームの雨を降らせる。
刹那、背後にまわったバリエントにも反応して撃ち落とす様はエースの貫禄すら見せた。
「腕を上げた、ガロード……ん!?」
フリーデンの壁が内側から爆破されていた。カトックの部下が立て籠もった部屋から脱出した後だ。
カメラを望遠モードに切り替えると、泳いでいる人影が見えた。ジャミルは逃げられたようだ。
同時に敵MSの撤退が始まる。「イタミワケ!イタミワケ!」「ああ、そうだなハロ」
戦いの終焉にホウとハロの頭を撫でたアムロだが……

「戦闘には、誤射はつきものでね……」

「何? 今、何をした、黒いガンダムのパイロット……ッ!」
アムロを悪寒がすり抜けていった。
それは脱出したカトックの部下を殺したオルバ=フロストの悪意、
フロスト兄弟が垣間見せた冷酷な野心であった。


424:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 03:20:04 ID:???.net

部下を先に行かせたカトックは、しかし自身は逃げずに踏みとどまった。
その顔は死に場所を探している男の顔だと、追いつめたジャミルには分かりようがない。
「話してもらおう! 今、我々の知らないところで、世界がどう動いているかを。
 地球連邦が、また動き出している……そうなのだろう!?」
銃を向けるジャミルの問いにカトックは答えなかった。
答える義理はないし、軍人として答える事はできない。
死ぬときは軍人か……と当たり前の事を考えてカトックは笑った。戦後も軍人として危険な任務にばかり就いてきたのだから当然だ。
死に場所を求めていたのもある。とはいえ、部下を持つ身なので命を投げ出すことはしなかった。
理に合わないと思えば命令違反も上官へ発砲もした。それは命を預かる隊長としてのカトックの在り方だった。
そして今、作戦に敗れた。しかし部下達を逃がすことには成功した。
望み通りの「負け」だ。
カトックはオルバの味方殺しを知らない。
軍人として戦いに敗れて死ぬ……良くも悪くもない人生だった。
カトックは己を振り返った。
「"俺には良い所が二つだけある"……死んだ女房の口癖だ」
しかし振り返って尚、出てくるのは軍人としてのカトックではない。
「"酒を一滴もやらない所"……それと、"諦めの良さ"だそうだ」
カトックは隠し持っていた手榴弾を手に握った。
「でも、それより悪い所もあるんだとよ。それは、"俺が嘘つき"だってことだ…」
ジャミル=ニートに殺されるよりはカトック=アルザミールに殺されて幕を閉じたい……
それはジャミルには矜恃に見えるであろう。だが、それはカトックの善意だ。
その理由をただ一人知っているNTの少女が部屋へと乱入する。
「あばよ!」「だめぇぇっ!!」
屈強なカトックの身体に、精一杯の力で組み付くティファ。
「あなたは生きなきゃだめ! だめです! 生きなきゃ…だめ!」
その必死な姿に、カトックは思わず心が揺れた。
「何故だ!? 何故俺を死なせん!?」
少女を見下ろし、カトックは問う。
「あなたは……優しい人だから」
そこには純粋で力強い眼差しがあった。



「……何か、ざわつくな」
フリーデンに着艦したアムロが、艦内に感じる空気を感じ取る。
「どうしたんだ、アムロ?」
「いや……」「ガロード!トップスコア!トップスコア!」ハロがガロードに告げる。
「ばーか、俺がゲテモノガンダム引き付けたからだろ」
「いやいや、GXのハモニカ砲が優秀なんでしょ?」
とガンダム乗り二人が負け惜しみを言うが、ガロードは(珍しく)調子に乗る様子は見せなかった。
「俺、強くなってるのかな……?」
ガロードの問いに、アムロは頷いた。
だがガロードは納得のいかないようだった。
「俺は……アムロに勝ちたい」
「………!」
「あ、MSだけの事じゃなくてさ、なんつーの? 男として?
 アムロや、ジャミルに勝てるぐらいになれなきゃ、ティファを守れないっていうか……」
「ふ……どこかの誰かと似たようなセリフを言う」
「モノマネ!モノマネ!」「ええ!? 真似?! 誰の!?」
アムロはランバ=ラルの事を思い出していた。
自分が、乗り越えたいと思った男の姿を。
今、自分がラルほどの男になれているか自信はない。
しかし、ガロードには自分やジャミルのような苦悩や挫折を味わって欲しくはない。
ガロードが自分に勝ちたいと願うならば……
アムロはこう願うのだ。



第二十一話 「俺は……ガロードに負けたい」


426:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 07:07:49 ID:???.net

GJGJGJ!
ありがとう!すごくよかった!!


430:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 21:30:50 ID:???.net

乙


431:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 22:19:16 ID:OCzingP0.net

乙


434:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 23:14:30 ID:???.net

以前の戦争でジャミル=ニートは軍に英雄と呼ばれていた。
連邦に勝利をもたらす英雄・ジャミル=ニート。
弱冠15歳のニュータイプ戦士
今、それを知る者とジャミルは対峙している。
「俺達一般兵の間でも、評判良かったぜ。…コロニーが落ちる前まではな!」
捕虜となったカトックとの尋問で、ジャミルは彼に詰られた。
「"ニュータイプの保護"か………笑わせる。
 あの戦争でトラウマ背負ったのは、ニュータイプだけじゃないのと違うか?」
カトックとジャミルの溝は埋まらないまま、何度目かの尋問は終わった。
誰もいなくなった部屋で、すり切れた写真を見ながらカトックは呟いた。
「また死に損なっちまった……こうなると、次の戦争を待つしかないか……」
そう、自分に言い聞かせるのに、少女の言葉が耳元に残っている。
――あなたは、生きなきゃだめ!



「苦戦しているようだ」テクスはアムロに語った。
そう言われてもアムロには答えようがない。
アムロも軍にいた。ジオン残党狩り部隊であるロンド・ベルであれば、尋問の手腕は多少、持っている。
「俺に手伝えって?」「そんな事は医者は頼まんさ」
テクスが年季の入った酒をアムロに渡す。
「情報も必要だが、解かり合うことも大切にしたいのだそうだ」
「ジャミルらしいといえばジャミルらしいが」
「その甘さ、長所なのか短所なのか……慰めてやってくれないか」
「サラが立候補すべきだな」「こういう時に、女性はダメだろうな」「確かに」
だがアムロは酒瓶を受け取らない。
「付き合いはそっちの方が長いだろう」
「私も軍属の身だったからな」
そうか、とアムロは納得した。
アムロは軍人で、戦争を知っている。だがこの世界の連邦軍は知らない。
ジャミルからみて共感と気安さを両方持っている、希有な存在だった。
「アイツにとって、いい機会なのかも知れないと思ってな」
「ん?」アムロは酒瓶を受け取った。テクスが隠し持っていたのだ、それなりの値はするだろう。
「連邦軍が現れたことで、アイツは自分を見つめ直す機会を得たのかも知れん
 ……そういう余裕は今までなかったからな。今も、余裕があるとは言えないが」
NTの事と、軍の……戦争の事は重なる部分もあるが、本来は同一ではない。



一方その頃、ゾンダーエプタに偶然にも接近したエニル=エルは、そこで新型のガンダムを見てしまう。
軍の警備隊のバリエントを引き離し、逃亡するのはエスペランサの性能と、彼女の腕による。
だが、フロスト兄弟の駆るガンダムまでは振り切れずにいた。
「いい加減にして欲しいわね!」
深夜に始まった逃走劇は、日が昇っても続いている。
このタフな精神力も、彼女の強さだと言えるだろう。



「だから、まずフォーメーション崩しが先決だと思うんだ!」
ガロードが先導してロアビィ達にバリエントへの攻略方法を説きながら廊下を歩いている。
「カシキリ!カシキリ!」
目的地である娯楽室の前には、この部屋のマスターであるハロが立ちふさがった。
理由を尋ねるよりはやく、彼らはガンダムのメンテを終えたキッドに掴まった。
「さ、皆さん、お仕事!お仕事!」
カトックから情報を得られない以上、足で探すしかない。
MS乗り達は海へと繰り出すのだ。
「索敵終わったら、アムロも呼んで考えようぜ」
「アムロだって元軍人なんだろ?考えるどころか攻略法知ってるんじゃねーか?」
「15年前からフォーメーション変わってないような奴らなら、対処する必要もないんだけどねぇ……」
「ウィッツ…」「可哀想な目でみるんじゃねぇ!」「ハロケッタ!アムロニダッテケラレタコトナイノニ!」


435:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 23:16:51 ID:???.net

娯楽室のバーカウンターで男二人がグラスを傾けていた。
「英雄…かっ」
ジャミルのグラスを持つ手が強くなる。
アムロは隣でグラスをあおった。
「英雄か。俺の世界にもそういう男が一人いたよ」
「お前自身のことではなく、か?」
「軍隊の……人を多く殺した英雄とは違うな」
敢えて、アムロはそんな言い方をした。
「少なくとも、人が望んだ英雄は俺じゃなかった」
アムロ=レイはアースノイド、スペースノイドを含めた地球圏の中で、一人の人間でしかない。
自分を一人の人間として思えばこそ、連邦を中から変えていきたいと思った。
一人で変えるのではなく、自分と同じ願いも持つ者達と一緒に、だ。
「だがニュータイプだった」
「それは……」
ジャミルの言葉に、アムロは押し黙った。
確かにアムロ=レイは一人の人間だった。UC0079~0093という舞台の上で、主役を演じた事はない。
だが、歴史の中で、アムロ=レイは最初のニュータイプとして記憶されていくだろう。
地球圏の中で主役を演じてきたシャア=アズナブルが、しかし本人はニュータイプにはなりきれなかった事と対であるように。
「少年の日の私は、ただ一人で戦争すら終わらせられると、信じていた!
 自分が英雄であることを、疑いもしなかったのだ!!」
それはそうだろう、とジャミルの叫びをアムロは思った。
Gビットとサテライトキャノンという力を持っていれば、15歳の少年がそう思うことに何の疑問もない。
周りの人間も、少年のことをそう持て囃しもしたし、望んだはずだ。
「……お前の世界の英雄は、どうなったのだ?」
「俺が……殺したよ」
グラスの中の氷が崩れた。
「アイツは急ぎすぎた……俺は、俺達は、アイツに地球連邦の、俺達の代表になって欲しかった。
 だが、アイツは内側から変えることより、外から壊すことを選んだ」
シャア=アズナブルは人がやらないことをやる才能があった。奇才と言っていい。
だが、彼は結局、彼の父・ジオン=ズム=ダイクンができなかった、『連邦政府の議員としてスペースノイドの自治独立の承認』を父の代わりにやろうとはしなかった。
一人の男として一人の女と愛し合い、家族を得るという行為すらできなかった。
そういう男だから、アクシズを落とした。
スペースノイドが生きるコロニーではなく、アクシズを落とす
それはシャアがジオン公国の再来ではなく、スペースノイドの為に立ちあがった証左である。
彼のスペースノイドへの思いは真摯であったし、彼が受ける期待を叶える方法も、役割も、演じて見せた。
そういう事ができてしまうシャアは、やはりララアが言ったように純粋なのだ。
純粋さ故に、奇術じみた生き方しか、考え方しかできなかった。
戦争を通じてでしかアムロに恨み言を吐けないのも、その亜流であるかも知れず、とどのつまり普通ではない。
そして常人と違うのが英雄であるならば、シャアは確かに英雄なのだろう。
「ジャミル、俺はその時代を知らない。けれど、お前は英雄なんかじゃなかったさ」
「………」
「その時代に、力も、役も、英雄として用意されて生まれてきたということがあっても
 お前自身はそうじゃない。そうじゃなく生まれ育ったと、今のジャミルを見て俺は言えるよ」
艦内が慌ただしくなる。
フロスト兄弟によって攻撃を受けたエニルを、ガロード達が保護したのだ。
そしてエニルによってガンダムの存在が、エスペランサのフライトレコーダーからゾンダーエプタの存在が分かった。
アルコールを抜くために、ミネラルウォーターをジャミルに渡すアムロ。
「この旅は、NTを保護する旅じゃない。お前自身の旅なんだ」
「……付き合わせて、済まないな」
ミネラルウォーターを受け取ったジャミルが、渋い顔で答えた。
「馬鹿を言うな。好きで付き合ってるんだ。
 俺には俺の旅もある。ガロードや、ティファにだって、そうあって欲しい。
 俺みたいな大人は、子供にそういう期待を強く持ってしまうな。
 ま、そっちを優先させる時がきたら、遠慮無く抜けさせてもらうぞ」
自分は元の世界に帰る、そうローレライの海で誓った。
だから今は旅の途中、そしてこの旅にある内は守るべきものの為に戦う。
アムロは、そう決めた。
そういう男でなければ、ガロードも背中の追い甲斐がないだろう。


436:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 23:20:54 ID:???.net

フリーデンはゾンダーエプタへと出航した。
サテライトシステムに対する警戒から、島への到着時刻を月の入りの後に設定している。
その為、ジャミルは今一度、カトックと向き合う時間を作ることができた。
「あれから考えた……それに仲間が教えてくれた。
 私がニュータイプの保護を唱える、本音の部分にあるものを……」
悲劇を繰り返したくない……それもジャミルの本音だ。しかし
「ニュータイプにこだわり続けることによって、自分の過去の傷を塞ごうとしている……
 ただ、それだけなのかもしれない……」
ジャミルが話し出してから、カトックは初めてジャミルに目を合わせた。
「アンタ、意外に弱い男なんだな。
 ……死んだ女房がよく言ってたよ。"他人の前で弱みを見せられる男は、本当は強い男だ"ってな」
態度が軟化してきたように見えたカトックだが、続いて出た言葉は拒絶だった。
「気持ちは……解からんでもない……
 だが! 俺はあんたを認めない! 俺はニュータイプというものが憎いんだ!
 ニュータイプにこだわる連中も虫が好かん!」
それは、カトックが一兵卒として泥にまみれて戦ってきた男であり、そんな男達を知っているからであった。
だが、それだけならカトックはジャミルを面罵しなかったであろう。
エリートとしてMSに乗って戦う彼らに嫉妬や不平さを内心覚えることはあっても、理性のある大人であるし
それに歩兵とMSが戦場では両方必要であるという事を理解できる軍人でもあったからだ。
「アンタらは……いや、アンタはあの悲劇を引き起こした!!」
この世界の、さらにある世代以上の者にしかわからない共通の景色をジャミルは突きつけられた。
「革命軍は連邦側のコロニーを制圧し、コロニー落とし作戦を実行した。
 それに対して、アンタらはどう対処した!? 同じ連邦のコロニーに対して、銃爪を引いただろ!!」
ジャミルは顔を背けず、カトックの罵倒を受けていた。
ジャミル=ニートはこの叱責から逃げる資格はないのだと、彼自身が分かっている。
「だから、俺は死ぬまで……アンタらニュータイプを認めない!」
艦内に、ミーティングの招集アナウンスが響いた。
カトックは道を空ける。これ以上の会話は、ない。
ジャミルも何も言わず、ドアへと歩を進めた。
「あの島、ゾンダーエプタと言う……」
その背に向かい、カトックは思わず口にしていた。
それはジャミル一人に責任を向けた罪悪感ではないか……カトックはその考えを振り切って、ことさら残酷に言い放った。
「そこでアンタを待ってる奴がいるよ」
「一体誰が?」足を止めるジャミルに、カトックは唇を曲げた。
「15年目の亡霊」



軍主導の作戦が失敗し、アイムザットは対フリーデンへの作戦指揮権を取り戻していた。
彼はゾンダーエプタにフリーデンが接近しているという報を聞き、出動命令を出した。
フリーデンもまた、この展開を予測していたのでMSを出撃させる。
戦いの勝敗を握るのはサテライトキャノンである。
ゾンダーエプタに深入りしすぎれば、フリーデンはその餌食となるだろう。
「フリーデンはこの位置で固定。敵を殲滅し、月が沈むのを待つ」
「フリーデンを狙え。月の出ている間に、サテライトの射程範囲内に誘い込む」
互いの戦術の下に、個々の戦いがある。
ガロード達は、敵に対抗するフォーメーションを実践しようとしている。
「ハエ共は俺が叩き落す!」「おこぼれはこっちが面倒見ましょ!」
アムロの役割は敵に突入し、戦闘のラインを下げさせないことだ。
エアマスターとレオパルドによる敵の掃討も、レオパルドがフリーデンの甲板で戦う都合上、
敵を野放しで進めると二機が捌ききれずに本丸のフリーデンが危険にさらされる。
その為に敵の全体の流れをコントロールするポジションが必要になるのだ。


437:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 23:22:38 ID:???.net

アムロはこれをガロードにやらせようとした。
GXの耐久性、機動性に加え、ディバイダーのハモニカ砲での掃討力があり、中に突入して相手を攪乱するのに向いている機体だからだ。
さらにもう一つ、敵の最高戦力であるフロスト兄弟のガンダムを引き受ける役割が必要になる。それはアムロが引き受けるつもりだったからだ。
なぜならばアムロの機体はドートレス。フリーデン側の最弱戦力である。
最高戦力に最弱戦力を当てるのは戦術における一つのセオリーだ。
最弱戦力を犠牲にすることで、常に他の部分で一つ上の戦力を相手に向けることができるからだ。
チューンアップしているとはいえ、ドートレスでガンダム二機を相手にするのはアムロでも厳しい。劣勢に立たされるだろう。
だが、死なないで戦い続ける自信がアムロにはあった。だからその作戦を提案した。
異を唱えたのはガロードだ。
だが、ガロードもアムロのMSパイロットとしての腕に異を唱えたのではない。
「俺にやらせてくれ。アイツらのガンダムは俺が止めてみせる!」
ガロードはそう言い、事実フロスト兄弟二人を相手に互角以上に戦っていた。
「フリーデンには指一本触れさせない!」
「コイツ! 僕達二人を相手にしながら!」「馴れとは恐ろしいものだな……」

ガロード達の戦いは続く。
そしてカトックの戦いもまた、始まっていた。
「フッ……船を出せ!」
ガムの中に隠し持っていた爆破装置で、カトックは監禁されていた部屋を脱出、
銃を奪い、フリーデンのブリッジに乗り込んだ。
「これで、月の出ている間にDXに対面出来る」
「ダブルエックス?」
銃口を突きつけるカトックに、ジャミルは聞き返す。
「そう。新連邦が極秘に開発した新しいガンダム……それがDXだ」

人質を取られたフリーデンは月の入りを待たずに発進する。
「何があった?」ウィッツが仕方なしにフリーデンを護衛するように位置を取る。
「ブリッジと連絡はとれないの?」ロアビィの問いに、皆無言で答えた。
「アムロ、見てきてくれ!」ガロードが決断した。
この戦場だけに限定するならば、フリーデン側にはそれぐらいの優位があった。
「分かった」アムロは短く答えて、フリーデンに着艦した。
ガロードの視界にはゾンダーエプタが見え始めていた。

艦内の雰囲気に違和感を覚えたアムロは、銃を構えながらブリッジへと移動した。
「何故こんな真似をする? 軍人としての任務に忠実なタイプには見えんが」
ブリッジの入口に背を当てて、中を伺う。
どうにも、捕虜に船をジャックされてしまったらしい。
「死んだ女房と……死んだ女房や子供と、同じ気分を味わってもらう……」
ジャミルに気を取られているカトックに、アムロは狙いを定める。
銃は……得意ではない。
「俺の家族は、あのコロニーにいた!」
「!?」
「お前が破壊した、あのコロニーにいたんだよ!!」
そこで明かされた事実、ブリッジに張りつめた雰囲気に、アムロは射撃のタイミングを失ってしまった。
「俺はいつ死んでもいい。そこが戦場ならばな。
 だが、お前達も道連れだ。サテライトキャノンを向けられる恐怖を、味わうがいいさ……」
モニターにゾンダーエプタの拡大図が映し出される。
新たなガンダム……ガンダムDXにサテライトシステムのマイクロウェーブが降りる。
アイムザットからの通告が入る。
『フリーデンの乗組員に告ぐ! ただちに武装を解除し、我々に全面降伏せよ!
 返答は3分以内! 回答が無い場合は、攻撃を再開する!』
だが、これはブラフ。
有線制御によってマイクロウェーブを受信しているだけにすぎず、未だDXはサテライトキャノンを使用できる状態にはない。
だが、他の人間には使えずとも、ジャミル=ニートには効果のあるハッタリだ。


438:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 23:25:26 ID:???.net

(撃つのか、本当に!?)
その、他の人間であるアムロは逡巡する。
確かに敵MSはサテライトキャノンの射程圏外へと退避した。
今、フリーデンを乗っ取っている男は死兵であるらしい。
条件は確かに揃っている。
威嚇射撃がないのは?GXのサテライトキャノンは連射が効かない。新型もその欠点は解消できなかった?
それなら複数生産すれば……いや、もし複数生産しているならば隠す必要がない。
アムロは直感的に、あれはブラフではないかと感じている。だが確証がない。
もし勘が外れていたら……例えカトックを撃ってももうサテライトキャノンの射程内なのだ。
フリーデンが撤退の動きを見せた時点でサテライトキャノンが発射されるだろう。
しかし、ゾンダーエプタ側がフリーデンのブリッジを把握している様子は見受けられない。
ならばカトックからジャミルを解放する事は損にはならない筈……アムロは銃を再び構えた。

「迷っているなら、いい事を教えてやるよ」

絶妙のタイミングでカトックがジャミルに語りかける。
「あのDXという機体、あんたが昔乗っていたGXを回収してこしらえたそうだ」
「何だと!? ……それで、『15年目の亡霊』なのか…!」
「そうだよ。アンタはもう一人の自分と戦ってたのさ……
 GXという、もう一人の自分とな……」
黄金に輝きを発するDXの後ろで、コードに繋がれた頭と腕のないGXが骸のように横たわっていた。
「キャプテン…」
サラたちがジャミルを見つめる。そこにはジャミルへの労りと信頼、覚悟があった。
彼女たちはジャミルがどのような選択をしても、後悔はないだろう。
「……降伏する!」
オレンジ色のバルチャーサインが飛んだ。
「完敗だ……捕虜になれば、どうなるのか……"明日の夕日は、見れない"かもな……」
ジャミルの言葉に、サラ達は目を合わせる。
そこへ、
「おっと! ……なんだ、嬢ちゃんかい」
ティファがキャンパスを持って駆け込んできた。
シンゴが叫ぶが、元よりカトックに彼女を傷つける気はない。
だが、彼女が持ってきたキャンパスを拾って、彼は目を見開いた。
「あなたのために、描きました」
母親と娘の絵。手を取り合い、笑い合う、平和な絵。過去の絵。
カトックの妻と娘の絵だった。
「私は、あなたに信じて欲しい……」


440:通常の名無しさんの3倍:2010/10/13(水) 23:28:05 ID:???.net

ティファがブリッジに駆け込む頃、既にアムロは動き出していた。
まず自分の部屋に散らばるジャンクパーツを(涙をのんで)全て海に投げ捨てた。
工具と衣類は自分と背丈が似通ったメカニックの部屋に突っ込んだ。
ポケットに入っていたセインズアイランドのスカート付きの口紅やイヤリングをこれ見よがしにデスクの上に置くと
今度はベットの上にエニルの着ていた服を探し出して(トニヤの部屋にあった)無造作に置いた。
最後に医務室でテクスと口裏合わせをすると、娯楽室の床を外した。
この部屋はロアビィによって改装されたばかりで、むりやり水を引いたりもしているので、こういう部分が存在する。
「ハロ!ハロ!」「お前も一緒に来る気か? 静かにしろよ」

飛びこんできたハロを抱えて、アムロは床に潜った。
ふぅ…と一息吐く。
「亡霊を退治するんだ、こっちも死人にならなくちゃな」
ハロ相手に、そんなことを語って気を紛らわせてみせた。
「アムロシボウ?アムロシボウ?」
「死ぬっていうより、最初から居ないフリだけどな。死んだフリはシャアの方が上手い」
影武者の使い方はハマーン=カーンが上手かった。が、それは上手くない方がいい。
「死なないことと、生きるってことは違う……」
あのカトックという男は、いつ死んでもいいと言った。それは生きた命ではないだろう。
シャアが連れ出したという本物のミネバ=ラオ=ザビはちゃんと生を実感しているだろうか?
暗闇にいると、そんな事も考える。
(ニュータイプ、15年前の英雄、ザビ家……)
その役を与えられた人間の未来は……





第二十二話「……シャアにはならないさ」


444:通常の名無しさんの3倍:2010/10/14(木) 00:48:35 ID:???.net

乙


関連記事まとめ

もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら☆
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もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 2 (未完SS)☆
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もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 3(未完SS)☆
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もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 4 (未完SS)☆
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もしもCCAアムロがガンダムXの世界にいたら 5 (未完SS)☆
http://blog.livedoor.jp/redcomet2ch/archives/37762581.html